Diamond devil 2
「はい、分かっています。姉御はやはり、器の大きい方ですね」
「それ、あんまり嬉しくないけど、一応ありがとうって言っとく」
私がそう言って笑うと、向井もやっとほんの少しだけ笑った。
「そういえば、向井、こんなとこにいていいの?若菜ちゃんは?」
「それが、朝から三代目と出掛けたきりで…。私は付いて来るなと言われましたので」
「あ、そう…」
その答えに、私の胸がまたキリリと痛む。
けれど、そんなことで一喜一憂していることを知られたくなくて、気にしていないフリをした。
「姉御、よろしかったら乗って行きませんか?」
幸いにも、向井は鈍いらしく、私の気持ちになんて気付く風もない。
道路に停めてあるベンツを指差してそう言った。
「ごめん。あんまり目立つの嫌だし、歩いて帰る」
「そうですか。それでは私はお先に。お嬢のこと、よろしくお願いします」
深々と頭を下げると、向井はベンツに乗り込んだ。