魔王家
―一方メイヤは―

メイヤ自身、魔王に勇者の存在を隠しきれている自信はなかった。

先日の勇者情報ニュースをメイヤも見ていたのだ。

「ぶー!」

お茶を吹きながら。

魔王が見ている可能性は高かった。

「しかし、魔王様は何もおっしゃってこない」

見ていないから何も言わないのか、見ていて何も言わないのか、メイヤには分からない。

何も言わないからこそ恐ろしいのだ。

情報操作しているメイヤは気が気ではない。

ただならぬプレッシャーの中で、メイヤは万が一の時のために、ある手紙を書いておくことにした。

魔王がアレンを小さい時から想っていたこと、アイドルになりたかったこと、マーサのこと等色々書き記す。

魔王が気落ちし、マーサに乗っ取られた時の事を考え、マーサに支配された魔王が自分を不思議な力で操ってくることを想定し、自我を取り戻すための指標になるように書いたのだろう。

メイヤはマーサに乗っ取られると、自分の意志では何も出来ないことを身を持って知っていた。

「少しでもきっかけがあれば、初代様の呪縛から逃れられるかもしれない」

その書いた手紙を自室の宝箱の中に入れて、メイヤは魔王の所へ向かった。
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