魔王家
二人を部屋の外に出した魔王自身も、気落ちしていた。

「アレン……アレン……」

魔王は両手で顔を覆っていた。

アレンと過ごした小さな時の思い出が、しかし、思い出というには鮮明過ぎる記憶が蘇る。

一緒に遊び、秘密を共有し、そして再会を約束した小学生の魔王とアレン。

「はは……。アレンは……常日頃より魔法を見ていたのじゃな……もえが魔法を見せても……驚かなかったわけじゃ……」

アレンは当時、魔族や勇者の家系の特性をまだ知らなかったので、誰もが魔法は使えると思っていた。

そのおかげで、魔王は素性がバレずに済んだ。

しかし、もう魔王だということは公になった。

「アレンは怒っておるのじゃろうなぁ。もえが魔王で……」

実際、アレンは魔王の元へ向かう勇者としては、異例のスピードでダンジョン攻略を成し遂げている。

魔王の記憶の中のアレンは正義感が非常に強かったから。

「なんでアレンが勇者なんじゃ……なんでもえが魔王なんじゃ……」

両手に覆われた顔から出た魔王の声は震えていた。

悩んでも仕方なかった。

それが運命なのだから。

「こんな魔王じゃ、メイヤとアーサンに申し訳ないな」

ここまで育て、教育してくれた二人の為に、魔王は顔を上げた。

二人が大好きだから、二人の為に『魔王』であろうと。
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