魔王家
―次の日―

「こ、これは!!」

只今時刻は12時15分。

授業が終わり、お昼ご飯の時間。
高校生のお昼と言えばお弁当である。

朝、メイヤから預かったお弁当を見て驚いていたのだ。

昨日メイヤが言っていたお楽しみがこれだった。

「わーもえちゃんのお弁当すごーい」

周りの友達が驚く。

それもそのはず。
そのお弁当の凄まじいこと。
見た目の色彩りもさることながら、味に関しては文句の付けようがない。

ただ一点問題が。
色彩りは申し分ないのだがデザインにおかなしな所があった。

「ハート……」

あまりにベタ過ぎて何も言えずにいる魔王を裏腹に、周りの反応は違った。

「私たちにも食べさせてー」

魔王の愛妻弁当ならぬ愛部下弁当は大好評だった。

魔王は城に帰ってすぐ、

「メイヤ、メイヤ。弁当のことじゃがな」

何故かメイヤがオロオロしだす。

「アーサンが作りました」

一瞬の沈黙。

聞きたいことが一気に増えた。

「メイヤが作ったのでは……いやそれよりも、アーサンがあれを……そもそもなぜメイヤが作らぬ?」

アーサンのところへ行く魔王。
アーサンに言いたいことがある。

「アーサン!!あの弁当!!」

アーサンはとっさにやり過ぎたと思っていた。

「明日もお願いします」

と一言。

一瞬の沈黙。

「がってん!!承知のすけ」

アーサンは大喜び。

「ハートは勘弁してくれ」

アーサンの弁当は食べたいのでハートの件だけ丁寧にお断りした。

後で分かったことだが、メイヤの料理は人が天に登る味らしい。

色んな意味で。




修得:尊敬の念
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