傷、のちに愛
―――ドンドンッ!
「和葉!」
玄関を叩く音とあの低い声。
私はのそりと立ち上がり、鍵を開ける。
余りに私の状態がひどかったのだろう。
息を切らせた小早川千秋は、息をのんだ。
「とにかく、俺んちに来るか?」
私は小さく頷いた。
―――そのあと、着替えをまとめて部屋をあとにした。
その間、彼は車の中で待っていて、決して必要以上に私に近づこうとはしなかった。
彼の顔を見た瞬間、私は気づいてしまった。
彼が来てくれてよかった。
そう思っていたことを、自然に受け入れられたことを。
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