傷、のちに愛



――彼の喉仏が上下する。

苦しそうな表情で私を見つめ、こう言うのだ。

「…今ここで、これ以上近づいたら和葉に嫌われるよな」

……え?

「その顔、反則だろう…」


そう呟くとほんの少し手に力を加えたが、すぐに力無く両手を遠ざけていった。

――キスされるのかと思った。

確かに今でも男の人は苦手だよ。
怖くてたまらないよ。

でも、私、千秋さんだから手がつなげた。
きっとあなただから好きになった。

千秋さんなら、怖くない。

………今言っても、全部信じてもらえないだろうけど。

出かかった言葉を飲み込み、夜は更けていった。


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