傷、のちに愛



「そんな関係じゃありませんから」

私は彼女…遥さんに向かってそう言った。

遥さんは満足したように笑い、その場を去っていった。

千秋さんは無言で彼女のあとを追っていった。

「――何アレ。美人だけどめちゃくちゃ高飛車!」

嵐が過ぎ去り、呆気にとられていた絵美は興奮しながらそう言った。

「…和葉?」

絵美に声をかけられるまで、私は気づかなかった。

静かに、涙がこぼれていることに。

「ちょ、ちょっと和葉!あんな女気にする必要ないんだから…」

絵美は慌てて慰めてくれているが、私の心までは届かなかった。



.
< 74 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop