傷、のちに愛
「そんな関係じゃありませんから」
私は彼女…遥さんに向かってそう言った。
遥さんは満足したように笑い、その場を去っていった。
千秋さんは無言で彼女のあとを追っていった。
「――何アレ。美人だけどめちゃくちゃ高飛車!」
嵐が過ぎ去り、呆気にとられていた絵美は興奮しながらそう言った。
「…和葉?」
絵美に声をかけられるまで、私は気づかなかった。
静かに、涙がこぼれていることに。
「ちょ、ちょっと和葉!あんな女気にする必要ないんだから…」
絵美は慌てて慰めてくれているが、私の心までは届かなかった。
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