爽やか王子と内気少女
「そうだよ、馬鹿香!」
私と永井君しか居なかった室内に、弥生ちゃんの声が響く。
「やっ弥生ちゃん!」
弥生ちゃんは険しい顔で図書室に入ってくると、机を挟んで私と向かい合う様に立ったまま、机に手を付く。
「あのね!私は香だから一緒にいるの!香といると落ち着くから一緒にいるの!」
少し強めに言う弥生ちゃんは、迫力があり怯んでしまった。
そんな私を見て、ため息を付くと椅子に座る。
「私さ、ハッキリしてる性格だから、友達とか出来ても『弥生って言い方キツイから傷付く』って言われて、離れていく子が多かったんだ…
友達作っても皆離れていくものなんだって思った。
でも、香はそんな私の事を受け入れてくれた。香は覚えてないかもしれないけど『弥生ちゃんはハキハキしててしっかり者だから羨ましい』って言ってくれたの……
私の言葉がキツくないか聞いたら『言葉に優しさがある』って。笑顔で言った香を見たらさ、『ああ、この子は離れて行かない。安心できる』って思ったの」