爽やか王子と内気少女
私が教室に入る頃には、
彼は自分の席に座って、教科書を仕舞いながら友だちと話をしていた。
彼の周りには人が集まるから、
今も3・4人が彼の机を囲んで話をしていた。
彼の後ろの席の私は、そんな光景を毎日見ている。
机に鞄を置くと、前を向いて話していたはずの彼が後ろを向いた。
私と目が合うとニコッと爽やかに笑う。
「新垣おはよ!」
………私?
「あっ、おっおはよう!」
少し焦りながら返した私に、彼は…
「吃ってる」
と笑いながらまた前を向いた。
何だったんだ?
私は変な汗をかきながら、友だちの西川 弥生(にしかわ やよい)の席まで行った。
本来なら私が「新垣」で、弥生ちゃんが「西川」だから名前順の関係で後ろの席のはずなんだけど、
私の席が調度一番後ろだから、弥生ちゃんは一番前なんだ。