誘う手の群れ
その日、桑名家では別の事件が起きていた。

それは昌人たち3人が御宿穴探検をしている最中に祖母が突然脳卒中を起こして他界してしまったことだった。

脳塞栓症により脳卒中を引き起こし、それに高齢が祟り、他界してしまったのだが、その最中、息を引き取る最後に「昌人……」とだけ言い残した。

もちろん、そんなことがあったなどとは露にも知らない昌人は夢月と共に警察に駆け込んで御宿穴の怪事件を報告した。

警察は昌人の言葉を真には受けなかったが、ひとりの少年が御宿穴という洞窟内に取り残されてしまっているということを重く見て、消防団と連携して捜索活動を開始した。

しかし、若江輝彦の遺体は見つかることはなかった。





昌人は思う……。

最初に洞窟に立ち入った際、一心不乱に拝んでいた老婆は自分の祖母ではなかったかと……

夢枕に立った祖母はこれからのことを案じてずっと拝んでいてくれたのではないかと……

そして、青白く光り、蠢く手の群れから逃げることができたのも、祖母が変わりに逝ってくれたからこそ、今、自分の命があるのではないかと……思った。




悪友だった輝彦は悪ガキだったけれど、良いヤツだったんだ。

そう思うと不思議に涙が頬を伝った。



━━━ fin ━━━
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