乱華~羽をくれた君~【完】



その笑顔も一瞬で真顔に戻る。



「・・・恐かったのかもしんねー」



「・・・え?」



「お前の存在が、俺の中でどんどんでかくなっていくことが」



寝転がったまま、両手をあたしの頬に伸ばしてきた陸さん。


その表情は穏やかだった。



「百合に一人で生きてくって約束したのに。もう誰にも本気にはなんねーって・・・俺はそれを破っちまったんだからな・・・」



「陸さん・・・」



「でもお前は素直で、まっすぐ俺にぶつかってきてくれて。そんでいつも俺の側で笑っていた。お前といると心が休まるんだよ」



あたしはただ陸さんの事が心配でそうしていた。


大好きな人だから、いつも笑っててほしいとも思っていた。


陸さんもそんな風に思っててくれたんだ。




「だから恐いんだよ…お前が百合みたいに、俺の前からいなくなんじゃねーかって」




その時あたしは陸さんを抱きしめていた。


自分でも大胆な事してると思う。


でもこの人が愛しくて愛しくてたまらない。



「おい・・・奈緒?」



「あたしはここにいるよ!」



「・・・」



「あたしは・・・陸さんの傍から離れない!絶対に死んだりなんかしない!!」



「奈緒・・・」



「百合さんは・・・きっと悲しんでる。陸さんに幸せになってほしいって願ってるはずだよ・・・愛した人の幸せを願わない人なんかいない・・・」



陸さんの顔を見上げると、目に涙が溢れていた。



「だから・・・陸さんは生きて。精一杯生きて。百合さんのためにも。あたしのためにも」


< 168 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop