ブラック・コーヒー
ブラック・コーヒー
「コーヒーをお願いします」


街の小さな喫茶店に入った僕はウェイトレスにそう注文した。

僕と初めて喫茶店に一緒に入る日本人は、少なからず驚きを覚えるようだ。

僕が紅茶ではなくコーヒーを注文するからだ。

別にイギリス人だからといって紅茶しか飲まないわけではない。僕だって紅茶は好きだがコーヒーだって飲む。

むしろ今では紅茶よりもコーヒーを飲む回数の方が圧倒的に多い。


やがて運ばれてきたコーヒーに僕はミルクも砂糖も入れずにそのまま口に運んだ。


思えばいつからだろう、ブラック・コーヒーを苦いと感じなくなったのは。

       ※
 

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