幾千の時を超えて
私の器を生みだす代わりに、寿命をまっとうすることなく生を終える運命を担った者。

本来なら私を生んで直ぐに死ぬはずだったが、私が薬を処方し無理やり生を伸ばした。

だが、それも5年しかもたなかったが……。

彼女の意思を尊重することが、私に残された唯一の償いだろうか。

いや、償いと考えることが彼女に対する冒涜かもしれない。

彼女はそんなものを求めるような人ではなかったから。

善人で、誰にもわけ隔てなく優しかった彼女。

彼女の病気の原因である私に対しても、叱責するようなことがなかった彼女。

彼女が私のことを考え、良しとした養女の件も素直に受けるべきかもしれない……。


「――わかりました。成人までお世話になります」

「成人までといわずにずっと頼りにしてほしい。これからは家族になるのだから」

「はい」



こうして、私に新しい家族ができた。

だが、これも、彼女が導いてくれた運命だったのかもしれない――。


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