幾千の時を超えて
『は~い! で、沙耶ちゃん、吉乃ちゃんのところに行くんだよね?』

「ええ、そうよ。貴女が望んだことでしょ?」

『うん。吉乃ちゃんちお金持ちだから、きっと大学まで行かせてもらえるよ~』

「別に行くつもりないんだけど」

『ダメダメ! 沙耶ちゃん頭いいんだからもったいないよ~』

「大学なら行ってもかまわないが、高校までが面倒くさい。
 なんで知ってることを勉強しなきゃいけないの。無駄だ無駄」

『でも高校までちゃんと行かないと大学いけないよ?』

「大検があるでしょう?」

『でも大検で入っても、いい会社には就職できないかも~?』

「だったら起業するからいい」

『ええ~。それだめ~! 小学校も中学校も高校もテストでは必ず1番とってね!』

「……確かにできるだろうけど、何で1番?」

『だってかっこいーじゃない! そんで、1番取ったらわたしの仏壇に飾ってね!』

「飾ったところで見えないと思うわよ」

『え! 見えないの!?』

「見えないわよ。貴女はこれから輪廻転生の輪の中に入って、次の生を迎えるために現世のことを忘れなきゃいけないんだから」

『えー。でも沙耶ちゃんは前世のこと忘れてないでしょう?』

「……私は特別。輪廻の輪を通らずに転生するよう仕組まれているのよ。
 だから、忘れない。たとえ何度転生しようとも……」

『沙耶ちゃん……。
 でも、ほら、わたしも天国から見えるかもしれないから、必ず1番取って、飾って飾って! ね、ママのお・ね・が・い!』

「……こんな時ばっかりママとか言わないでくれる……。
 むしろ、私にとっては大きな子供抱えてる気分だったわよ」

『えへへ~。沙耶ちゃんの方がしっかり屋さんだもんね~』

「貴女がのんびりしすぎなのよ。だから変な男につかまるのよ?」

『ん~。でも沙耶ちゃんに会えたから後悔してないよ?』

「……そう」

『うん! あ、そうだ大事なこと伝えとかないといけなかったんだ』



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