深海から見える灯【完全版】

21歳

ヒロの死・・・・。


それはあたしの心のずーっと奥でいつもグルグルと渦を巻いている。

きっとこの先、何年、何十年経っても、それはいつもグルグルと変わらない。


ヒロの死からしばらくして、チイから手紙がきた。

長い手紙には、ヒロがどんな風だったかがいっぱい書いてあった。
あたしが引っ越してからのヒロの様子。

そしてヒロの写真がいっぱい入っていた。

あたしはそれを箱にしまって見えない所に置いた。





携帯を見ながらあの箱はどこへしまったかな?と思った。

(ダメだ!思い出さないって決めたんだから)

頭をブンブンと振っていると

「メイさん、指名入りました」

と、黒服があたしに言った。

「あ、はい」

あたしは立ち上がる。


あたしが住んでる5大都市のひとつ。

この飲み屋街を日本で知らない人はいないと思う。


あたしはキャバ嬢として働いていた。

友達に誘われて働き始めたキャバクラで、OLになった今でもあたしは働いていた。

理由は単純。「お金」

どうしよもない男と付き合っているあたしにはお金が必要だから。

借金まみれのその男のためにあたしは働いている。


「さて・・・」


ここではあたしは「うらら」ではなく「メイ」。

何がいいのか、結構人気も出てきた。

鏡で自分の姿を確認すると

「今日も稼ぐかなー」と言った。

同僚のキャバ嬢の子が「ヘルプ呼んでね」と声を掛けてきた。

「OK」あたしは笑ってピースをした。

そして黒服の後をついて行く。

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