深海から見える灯【完全版】
ライブの日、ここが地元のあたしでさえよくわかんないようなマニアックな場所にライブハウスがあった。


入り口でモリと待ち合わせしている。
お互い顔もわかんないし、あたしは着いた事を知らせようと携帯をバッグから出した。


「おー、うらら」

目の前で声がしてビックリする。

「え?」


ラグランTにジーンズの男の人が笑っている。
携帯を片手に固まっているあたしに「オレ!」と言った。


「モリ?」


全然違う!中学の頃と全く違う。昔から細かったけど、今は華奢な感じの軽そうな兄ちゃん。


「お前、変わんねーな。大人にはなったけど。一発でわかった」


陽気にしゃべるモリに比べてあたしはまだ半信半疑だった。


「もしかして疑ってる?免許証見せようか?」




人間って、あんなに変われるんだ・・・。



モリの後についてライブハウスに入りながらしみじみ思った。



モリのバンドって人気あるのかな?
もらったオリジナルのCDのジャケットを見ながらあたしは思った。
ギターボーカルで、作詞作曲もして、それってあたしが会いたい「青い人」と一緒だな。
まぁ、あっちは人気絶頂で、こっちはまだインディーズでさえデビューしてないけどさ。


モリは自分の出番まで、何回もあたしの所へ来てくれた。
きっとすごく気を遣っているんだと思う。
それはありがたいけど・・・


時々、数人の女の子にジロジロ睨まれて
「あいつ、モリの友達?彼女?」と言われる始末。


(違うよー、あたしちゃんと彼氏いるし、別にモリの事独占してるわけじゃないからね!)

心の中でそう思っていた。

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