深海から見える灯【完全版】

現在(後編)

入院生活は一言で言うと『ヒマ』。


だって、あたしはどこも悪くない。


今までかかっていた小さな心療内科から、この大学病院へ転院したらしい。

そっちの治療もここでするらしい。


「よいしょ・・・」

あたしはベッドから起き上がると、カーディガンを着た。


「うららちゃん、またお出かけ?」


同室のお婆ちゃんがタバコを吸う仕草をした。


「内緒ね。心電図のデータ飛ぶって怒られてるの」


あたしが笑って言うと、お婆ちゃんはOKのサインをした。


「帰りにお茶買ってくるから」


笑顔でバイバイと手を振る。





「こんにちは」


外の喫煙所であたしは声を掛けた。


おばさんが笑顔でうなずく。

このおばさんは口がきけない。


ジェスチャーであたしに「大丈夫?」と伝えてきた。


「うん、元気だよ。おばさんは?」

おばさんはもう一度うなずいた。
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