Black★Joker【完結】
「……マジで勘弁してくれよ……」
俺は斎藤さんの歩いていった方向とは逆の方に向かって歩いた。
胸の中に熱いものが込み上げてきたと思った瞬間、目から涙が零れ落ちた。
涙は自分の意志とは関係なく頬を伝う。
最近メソメソ泣いてばっかりじゃねぇか。
俺がこんなんじゃ、あいつをメソ男なんて呼べないな。
「……クソっ!!」
待合室から離れ人気のない場所にくると、俺は壁に背中を預けた。
シーンっと静まり返る病院の廊下でポツリと呟く。
「……斎藤さん、俺ダメかも」
変な気を起こすなって言われても、俺そんなに我慢強くないじゃん?
川上をこのまま放っておくことなんてできねぇよ。
メソ男がそれを望んでいなかったとしても、もう止められない。
「なぁ、メソ男。俺、お前との約束守れそうにねぇや。やられ損なんて……こんなの耐えられねぇよ」
ギュッと唇を噛み締めながらそうポツリと呟く。
目を瞑ると美空とメソ男の顔が瞼に浮かんだ。