Black★Joker【完結】
今は両親と3歳年下の弟の3人で仲良く暮らしていると話してくれた川上くん。
川上くんに暴力を振るわれたという事実は変わらない。
だけど、どうしても彼を憎むことが出来なかった。
それは彼が僕と同じように家族のことで悩んでいるような気がしたから。
僕より一つ年上で、金色に髪を染めていて、絶対に怖くて近付くことのできないタイプ。
そんな川上くんとこうやって肩を並べて歩いているなんて、今までの僕じゃ信じられないくらいだ。
母さんとは退院するまで互いにギクシャクしていた。
今までとは逆に、母さんが僕の顔色を伺うようになって。
でも、退院して家に帰ると、テーブルの上のお皿の上には形の歪なクッキーが置いてあった。
「久しぶりに焼いたから失敗しちゃったのよ」
少しだけ恥ずかしそうな母さんの顔。
クッキーを一つ摘み上げて口に放り込むと、懐かしい味に顔がほころんだ。
そして、母さんは僕にした仕打ちを何度も詫びた。
「お父さんが家を出ていったのは、優が中学受験に失敗したからじゃないの。お父さん、前から浮気してたのよ」
「浮気……?」
父さんと母さんの喧嘩の原因は父さんの浮気だった。
それが発覚したと同じ時期に、僕が中学受験に失敗した。
「お母さんが弱かったばかりに……辛い思いをさせてごめんね。本当にどうかしてたの。息子を縛り付けるなんて最低だわ……」
父さんが家を出ていき、母さんは僕に依存するようになった。
「……もういいよ。そのかわり、僕が食べたい時にクッキーを焼いてくれれば」
そう言って微笑みかけると、母さんは謝りながら、ポロポロと涙を零した。
僕と母さんは和解した。
だけど、川上くんはまだ……
「ねぇ、川上くん。もしよかったら……」
「何だ?」
「もしよかったら、僕と友達になってくれないかな?」
「友達……?」
「そう。ダメかな?」
やっぱりこんなお願い無謀だったかな?
不安になって川上くんを見ると「別にいいけどよ」彼は少しだけ照れ臭そうに頷いた。