Angil voice ~君の声がこの街に響くように
別れの時
 凛は集中治療室なんて所には入ることはなく、いつもの病室で酸素マスク
と点滴をつなげられていた。


あの状況でこの措置をとるということは、凛の命がもう、
残されていないことを痛いほど感じた。

延命さえもできないのだ。



「今夜が峠だと思います。」

診察を終えた医師が病室から出てきて俺たちに伝えた。


坂井が泣き崩れ、父親の胸で泣いている。


俺は凛が死んでしまう、という事実を受け入れることができず、
泣くことさえできなかった。


1時間すると、看護師がやってきた。

「目が覚められました。

 もう、話のがやっとで・・・、


 早くご家族の方とお話しされた方がいいと、思いまして。」


先に坂井が部屋に入った。
凛に駆け寄り一言二言話した。

その声は2、3mの距離にいる俺にさえ聞き取れないほどの
小さな声だった。


すると、坂井が俺の方を見た。

「羽流を呼んでる・・・。」



俺はゆっくりと凛に近づいた。


小さな、本当に消えそうなくらい小さな声で凛が話始めた。

「羽流・さん・・・。

 ありが・とう。
 
 私、貴・方に会・えて本当・に幸せ・だった。」

俺は力なく首を振った。

凛はゆっくりと左手をあげ、指輪を見ている。

「これ、本当・に嬉しか・ったの・・・。

 一生・分・の幸せ・だった・・・。」



俺は堪えていたのに、耐えきれなくなって、涙がこぼれ始めた。




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