空模様、降り流れては虹を待つ。


 空が錆びた匂いがしていた。


 薄く覆った灰色の雲から、地面が跳ねそうなくらいの激しい雨粒が、地上を目掛けて落ちてきた。

 それによって砂浜に残したはずの足跡はかき消えてしまい、残念そうに結城 千鶴はうつむいた。


 ぴちゃぴちゃと音を立てながら、雨混じりの砂を、新しく購入したばかりの長靴の爪先で弾く。


 一見スニーカーのように見えるそれは、千鶴が店頭で一目惚れして買ったものだ。


 靴部分が全てうす茶色をした中、虹色に染められた靴紐はとても綺麗で、長靴にしては少し値が張る代物だった。


 それでも幾分か雨が楽しいものになりそうな気がして、千鶴にしては大枚をはたき、浮き浮きと手にしたもの。


 その後久しぶりに彼氏である修と会うことが決まって、せっかくのデートだからとおろしたのだが。


お気に入りになる筈だったその長靴を履くことはもう二度となくなりそうだと、彼女は溜め息をついた。


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