地味子の秘密*番外編*


「なぁ、神崎さんって……妬かないよな?」


梅雨に入った6月の下旬。

教室で、休み時間を過ごしていたところ、悠が話しかけてきた。


「……あぁ」


チラリと悠に視線を向けただけで、そっけなく返す。

そんなこと、言わなくたって、俺が重々知ってるっつーの。


「柚莉とは、正反対だもんね」

「確かに」


松沢の性格を思い出して、頷いて見せた。

松沢は、悠によく妬いているらしい。

コイツは、基本他の女たちにも優しく、分け隔てなく接するからな。

そんな悠に好意を抱いている女たちは多い。


優しそうに見えて、実は武道も出来る。

剣道は、幼少期から習っているから、有段者。

強くて優しい悠は、女子の人気者だ。

それで、松沢はひやひやしっ放しだというのである。

まぁ、コイツらはお互いのことが大好きで、バカップルと有名だ。



「お前は神崎さん大好きだけど、彼女はどうだ?」


悠の一言に、ドキッと心臓が跳ねた。

アイツは……好きではいてくれると思う。

じゃなきゃ、とっくの昔に俺がフラれてるさ。


「……大丈夫なはずだ……」


なんて言いつつも、内心……不安だらけだったりする。

すると、悠がこんな提案をしてきた。


「じゃあさ、神崎さんを妬かせてみないか?」



この言葉が、杏ちゃんにヤキモチを焼かせよう作戦の始まりだった。



< 177 / 381 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop