地味子の秘密*番外編*
あんなに妬いてほしかった杏が、今……めちゃくちゃ妬いてる。


「杏ちゃん?」


わざと、からかうように名前を呼んだ。


「……」


無言のお返しだ。

反応ねーし。


「妬いてんだろ?」

「……」

「あれ~? 杏ちゃんムシかな?」


ホントに、うれしくて仕方ない。

俺があれだけ頑張っても、妬かない杏が……ククク……。

抑えようと思っていても、肩が震えそうになる。

ヤベェ……。

なんて思っていたら。


「うるさいよ、このバカ」


――クイッ

頭にかけられていたタオルの端を掴み、杏が俺の顔を覗き込んで来た。


そのまま……一瞬だけ、キスされる。


「あたし以外に見せちゃヤダ」


そう言って、プーッと頬を膨らませて見せる。

なんすか、これ……かわいすぎる生き物。


「杏、お前……ヤベェー」

「なにが?」


今度は、杏がわけがわからないというような、キョトンとした顔で見つめられた。

この無自覚さもたまらない。

――グイッ


「ひゃあっ!?」


杏の腕を引いて、抱き寄せる。

あたたかいコイツの体を抱きしめて、髪に顔をうずめた。

ヤキモチ焼かせよう作戦……成功か?

まぁ、今回ので、杏が妬くポイントがわかった。

俺が、他の女たちに見せないものを見せた時に、コイツは妬くわけだ。

収穫ありとして、いいことにしよう。

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