地味子の秘密*番外編*
その瞬間。



「茅那さ~ん、次入ってください」



スタッフさんから撮影開始の合図がかかる。



「あ、はいっ」


実那に試食してもらったブラウニーをバックにしまって、いざ行こうとした時。



ーーグリッ……!


「ひゃっ……」


履いていた高いヒールの踵が床をすべり、左の足首が、思いっきり内側に曲がった。



ーーズキッ


すぐに、左足首に鈍い痛みが襲う。

痺れて、一瞬足に力が入らない。


い、痛かった……この靴、ヒールが12センチくらいあるもんなぁ~。


いつも、こんなに高いヒールの靴履かないから慣れてないんだよね。

捻挫……したかな?


自分の左足首を立ったまま見つめて、右足での片足立ちでブンブンと振ってみた。


あれ……? 大丈夫かも。


痛みは、最初だけで、もう気にならなかった。


そんなに酷くないだよね。



「茅那さん? どうかしましたか?」


スタッフさんが、私の様子を見て話しかけてくれる。



「いえ、大丈夫です! すぐ行きます」


ニッコリと笑って返し、私は歩き出した。


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