俺様彼氏と空手彼女
「りい…。」
切なそうに名を呼ばれ、胸が苦しくなる。
そして森崎葵はだんだん私に覆いかぶさるように
唇と唇を近付けてきた。
お互いの息が感じられる。
だけど、触れるか触れないかのとこで
突然アイツは、私から離れた。
え…??
その直後、体育館特有の重たい引き戸がガラリと開いた。
「おー、一年か。早いなぁ、関心関心」
と、顧問の先生がニコニコしながら入ってきた。
「他の奴らはまだかー?」
「はい、まだみたいです」
と、森崎葵は答えた。
「おー、そうかー。まぁ、部活は四時半からだからなー。」
と、顧問はのんびりと言った。
「じゃあとりあえず、みせてもらおうかな」
「え??何をですか??」
「決まってるだろう、俺と練習試合だ」
さっきとは違う笑顔で言う顧問。
「確か二人とも経験者だったよなー。」
えっ!?アイツも経験者なの!?どおりであっさり受けとめるはずだよね…。
「さぁ、じゃあどっちから来る?」
「…じゃあ、牧瀬から」
はぁ!?なんで私からなの!?