キスより甘く囁いて
「叶多くん、コーヒーでいいかな」
「うん。お構いなく」
私はキッチンへコーヒーを淹れに行った。
ふと、青いマグカップが目につく。
凛専用のやつだ。
いつか突然部屋にやって来て、『これ、俺用』と言ってそのマグカップを置いて行ったのを思い出した。
「…ま、いいか、これで」
私は深く考えずにそのマグカップを手に取り、まだ熱いコーヒーを線を描いて注ぎ込んだ。
「はい、どうぞ」
コトン、とテーブルにマグカップを二つ置く。
一つは自分の前に、もう一つは叶多くんの前に。