乾柴烈火 Volatile affections
裸眼で見る視界は常にぼやけていて、

薄暗いお店の中で接客をする私には、

当然お客さんの単純で直線的な欲求も、

目の中にある本音のようなものも、

何一つ見抜くことができない。


ママはいつも、

「お店に来るお客さんは日本人女性との疑似恋愛をするために来店するのよ。」

と言っている。

私はそのママの言葉を、

『どんなきれい事を言ったところでこの商売は‘私とセックスがしたい’と思われてなんぼのものだ』

と解釈した。

私の裸眼の視界は仕事をするにおいて

きちんと役に立っている。

お客さんの目からはみた私は、

さぞ隙だらけかの様に映っているだろう。

このUncleared Worldは、

このように偶発的に、

そして必然的に、

私の本能で作り上げたものに違いなかった。











ともあれホステスとしての小森志保は、

こうしてここで生きるために

私を装って、作り上げて生きている。

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