乾柴烈火 Volatile affections

Back to Hongkong

帰りの飛行機の上から見る

2週間ぶりの香港は、

相も変わらず美しくて

私の心を魅了する。

だけど、

私が行きたいのは本当にここなの?

私は、

本当はどこに行きたくて

何を見たくて

誰といたいのだろう?

美しい景色を眺めながら

そんな事を考えたけれど

何一つ答えが出る事はなかった。



入国審査に並んだ。

不法就労者である私にとって、

この瞬間が最も緊張する時間だ。

今回も何事もなく、

普通に通れますようにという

私の願いもむなしく

私は入国審査官に怪しまれた。

別室に移動させられて

尋問を受ける。

他のホステスのように、

英語を知らない振りをする事はできない。

私のパスポートには

船員としての出入国暦が

しっかり記載されているからだ。

私はたくさんの質問に答えつつ

シラを切りとおす。

私は観光で香港にきているだけで

友達と遊んでいるだけだと話す。

入国審査官はその場で

明かした浩賢の電話番号へ連絡をする。

浩賢が上手く言ってくれたので

ようやく私は解放された。

時間が経ったからだろう。

レールの上をまわることなく

傍らに放置してあったトランクを持ち

税関を抜けて

ゲートを出る前に立ち止まった私は

携帯で浩賢に電話をする。

「もしもし。さっきはありがとう。」

「気にしなくていい。それよりも志保は大丈夫なの?」

「うん。私の事は気にしないで。本当に大丈夫だから。」

「本当に無理してない?」

「してない。私は何とかするから。びっくりさせたね。もうこんな事はしないから、ごめんね」


それだけを早口で言って電話を切った。

私はもう

浩賢とは友達ではいられない。

数ヶ月前の

ラブホテルでの事を思い出して

一人眉をしかめていると携帯が鳴った。 



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