モノクロォムの硝子鳥

圧し掛かるような重圧を思わせる雨雲が空一面を覆い尽くしていた。

今にも降り出しそうだな……と思えば、見上げた空から雨が地に吸い込まれるように落ちて来た。

下校時刻、外を歩いていた生徒達は早足に雨を避ける。
用意していた傘をさして帰る生徒もちらほら見える。
まだ昇降口から出ていなかったひゆは、雨の降る校庭をぼんやりと見ていた。

雨足はさほど強くない。
折りたたみ傘も持ちあわせていなかったので、濡れるのを諦めて雨の中を帰る事にする。

学校から最寄り駅までは、のんびり歩いて15分そこそこの距離。
走れば10分も掛からないだろう。

雨の中、踏み出した足は走り出す事も無くいつもの調子で進む。

小雨が少し強いくらいの秋雨は肌寒さを感じさせたが、視線をやや下に向けたまま、ひゆはいつもの歩調で校門へと向かって行った。

ささめく雨音と、下校時刻の生徒の談笑や生活の中の音達は、ひゆの耳に触れてもそこから意識へは浸透していかない。

聞こえていない訳ではないが、耳の奥深くまでは入ってこないのだ。
空に広がる薄暗い雲のように、周りの景色も灰色にくすんで見える。

簡単な話、自分の周囲の事に無頓着と言って良いほど興味が沸かなかった。
意識しなければ、ひゆにとって日常生活も暗い深海と変わり無い。


――暗く、彩りも音も何も無い

…重い世界――…。


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