non title
06、景色は変わらず



06、景色は変わらず




「マジありえないんですけど」

そう一言だけ言い放ち、ハルナは終話ボタンを強く押した。
向こうが何か叫んでいたけれど、聞き取れなかった。強引に通話を終えたからだ。

携帯をバックに放り込んで、辺りを見渡す。
人通りの極めて少ない団地。電信柱の横で寝転んだ猫が大きな欠伸をしていた。
ハルナは静かに近づいて、その猫の前にしゃがみ込む。そっと眉間を撫でてやると、咽を鳴らした。
美人なにゃんこ。野良猫かな?

のんびり見つめていると、そこに一台の小さな白い車がやってきて、止まった。運転席から小太りの眼鏡を掛けた男が出てくる。
猫はびっくりしたのか、すばしっこく建物の隙間に逃げていってしまった。
ちょっとショック。

< 29 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop