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07、彼の迷走



07、彼の迷走



ハルナから仕事中にメールが届いた。
「部屋勝手に決めたけど良かった?」という内容。
そもそもドタキャンした俺に選択権などない。それくらい悪いことをしたと思っている。
人見知りなあの子が、しばらくの間、見ず知らずの男と二人きりだなんて、相当苦痛だったに違いない。
しかも担当の鈴木という男は、それなりに若かったし。
間違いが起こる可能性も……絶対ないとは言いきれない世の中なんだから。

時計を何度も見つめて、彼女に想いを馳せた。
とても落ち着きがなかったのだろう。周囲のスタッフが俺の体調を心配してか、何度も「休憩しますか?」と尋ねてきた。
俺はそれを全て突っぱね、早急に仕事を終わらせたいのだと目で訴えた。
記者にその感情は読み取れなかったみたいだ。
だらだらと長時間続く取材。
彼女のことが気掛かりで、俺は少し苛立ちはじめ。

途中、一度休憩を挟んだ時、ハルナにメールを返信した。
謝罪の言葉を含め、俺にしては長文なメール。と言っても五行にも満たないのだけれど。

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