上司に恋しちゃいました
「土曜の朝に来る? それとも金曜の夜に来る?」


「仙台だったら新幹線で二時間弱くらいですよね? 金曜の夜に接待があるなら、私が仕事終わりで向かえば、ちょうどいいかもしれません」


少しでも長く鬼の王子の側にいたかった。


一回でも多くの朝を共に迎えたかった。


「向こうで何する?」


「……温泉、とか?」


「温泉か、いいね」


不倫旅行といったら、温泉かなと思って、何となく口に出しただけなのに、呆気けなく決定してしまった。


ベタだろうが何だろうが、鬼の王子と一緒にいられるならそれでいい。


鬼の王子は目を細めながら、あたしの頭を撫でた。


頬に感じる鬼の王子の胸板の体温。


鼓動も、肌の感触も、匂いも、すべてが愛おしくて、切なかった。


週末になれば、このまま瞳を閉じて眠ることもできるんだ。


そう思うと、待ち遠しくて、嬉しくて、心が躍った。


胸板に軽くキスを落とす。



好きだと言えないあたしから送る、精いっぱいの愛情表現。


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