上司に恋しちゃいました
こんな自分を認めたくなかった。


でも、どんなに手放したくても、黒い感情は確かにあたしの中にあって、どんなに泣き叫んでも離れようとしてくれない。


嘘なんてつきたくないのに。


鬼の王子を罵倒して、平手打ちして、目の前で泣き叫びたいのに。


どうしてあたしじゃないの?


どうしてあたしじゃ駄目なの?


どうして愛してくれないの?


風がゴオオと唸る度、あたしは思い切り声を上げた。



「あああああああ!」



どんなに泣き叫んでも、やっぱり鬼の王子が好きだった。


好きで好きで、どうしようもないほど、どうすることもできないほど、好きだった。

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