上司に恋しちゃいました
「嘘ついてたことに怒ってるのか? でもこれは上司と相談して決めたことで……。それに……いや、うん、言い訳はよくないな。すまん。だから……その……」


立場が逆転してしまったあたし達。困っている鬼の王子が可愛くて、ついつい意地悪をしたくなる。


「許さない」


あたしは両手を顔から離し、ゆっくりと鬼の王子の顔を見た。


鬼の王子はとても悲しそうな顔をしていた。


「……結婚してくれなきゃ、許さないから」


真剣な顔付きだったあたし達はお互い見つめ合うと、どちらからともなく、ぷっと笑い出した。



そして、鬼の王子はあたしの手を引っ張り力強く抱き寄せた。



「結婚しよう、美月」


あたしの髪に口づけをしながら、鬼の王子はそう言った。



薬指の十字架が解かれた鬼の王子の腕の中で、私はゆっくり大きく頷いた。














第一章『薬指の十字架』 【完】


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