上司に恋しちゃいました
*  *  *


あたしは何もなかったかのように、いつも通りに出社した。


いつも誰よりも早く会社に来ているはずの鬼の王子の姿はなかった。


始業時間ギリギリに鬼の王子が出社し、女の子達は珍しそうに鬼の王子を見ていた。


「寝坊かな?」


「珍しい~。あれ? スーツ昨日と一緒じゃない?」


その言葉に、ドクンと胸が逆立った。


女はなんて目敏(めざと)い生き物なのだろう。


そうか、家に帰る時間がなかったんだ。


いや、朝帰りなんてできるはずないか……。


そんなことしたら、浮気してきましたって公言するようなものだ。

< 35 / 341 >

この作品をシェア

pagetop