澁澤雑文店-澁澤わるつ短編集-
この世に仇なすもの
今日もたくさん届いた郵便物を開封しながら、傍らにいた臼庭君に今朝見た夢の話をした。


夢の中の私は駅で、密かに思いを寄せている男の人を待っていた。

切符売り場を遠くから眺めていると、やってきた彼は、彼の背丈の半分ほどしかない髪の長い娘と手をつないでいた。

彼は私の視線を覚ったのか、彼女を隠すように抱きしめて、その後、娘を駅から帰した。

娘の背中を見送った彼は、ため息をついてふりかえると、私に向かって、哀れみの混じったような笑顔を見せた。


電車に乗った私は悲しくて泣いた。悲痛な声をあげて泣いた。

彼に恋人がいたから、という以前に、自分の存在を全否定されたような絶望感からだ。

 
とにかくダメなのだ、私では、わたしでは。


胸いっぱいの絶望感で目が覚めた。

そして仕事をしている今でも、胸が重い。
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