【短編集】フルーツ★バスケット
甘い果実
“あやか”なんて名前は、何処にでもある。
それに、今日チャットの約束をしたわけでもない。
そう思いながらも、凄く気になる。
相手の名前と年齢を確認すると、この間話した人と同じ。
【ジュン 31歳】
と表記されていた。
ま、違う人だったら、その時は出て行ってもいいしね。
まるで、見えない糸に引かれるように、三度目扉を開けてみた。
今日は、至って普通の日常会話。
昼間の出来事、
互いの家族の話、
好きな音楽
……などなどと。
それでも、やっぱり楽しい。
お互い、心の隙間を埋めるかのように、時間の許す限り語り合った。
そして、メアドと電話番号まで交換してしまった。
それからは、メールの無い日なんてあり得ないくらい、毎日連絡を取り合った。
初めてジュンのフルネームを知ったあたしは、早速電話張に
【小野 淳】
と登録した。
電話も決まってam1:00になったらバイブ音が通知してくる。
ねえ、
どうして?
そりゃさ、電話やメールは楽しいよ。
けど、毎日が楽しすぎるのが、段々と怖くなってきた。
今の生活を
互いの家庭を壊してはいけない。
それでも、ジュンと話が出来ないと辛くなる程に。