【短編集】フルーツ★バスケット

 3分間、普段ならなんて事のない時間だけど、

 こんなにも注目されて、まるで、音楽のテストでも受けているかのようだった。

 暑くもないのに、掌や額が汗ばんでいた。

 頑張ってみたけど、少しはマシに弾けたかな?

 …………
 …………
 …………

 何も反応がないってことは、やっぱり下手っぴ…だよね。

 もう、穴があったら入りたいよ。

 俯いたまま、みんなのところまで戻った。

 グアシッ、と肩に手が乗っかり

 別の手は、頭を、ポンポン、と撫でられた。

 何事かと思って、顔を上げてみると、そこには屈託のない笑顔であたしを迎い入れてくれた

 蒼くん、郡司くん、の二人の姿があった。


「凄いね。まさか、あの曲を覚えている人がいたなんてね」

「合格だ」

「あの……」

 まだ、意味が分からないあたしは、この状況にどう応えていいのか分からないでいる。


「何処がいいんだよ!!
 半音上がってるし、これは、そんなに元気よく弾いちゃダメなんだ。
 この曲はな──」

「はい、そこまで
 細かい指示は、これからしていけばいいだろ?」

 ダメダメなあたしに、兎にも角にも何かを伝えようとしていた廉くんの言葉は、蒼くんによって、遮られてしまった。


「そうそう。
 音楽は、楽しくやろうぜ」

「勝手にしろ!!」

「ホィ。
 それじゃ、勝手にするから。
 これからの、口出しは受け付けないよ~」

 怒って出て行った廉くんを全く気にしない二人と、何故かこの輪の中に雑ざっているあたし。

 何かが始まった感じはするのだけど。

 いったい、何を興奮してるの?



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