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想い

「沙羅ちゃん…?」

泣くだけ泣いて、魂が抜けている状態のあたしの名前を呼ぶ。
ふっと、少し魂が帰ってきたようだ。

拓也はあたしに手を伸ばす。


「…よく頑張ったね」


そう言って、ゆっくり、そして優しく頬を触った。


拓也に触れられるたび、魂が戻ってきた。


「…俺は話を聞くことしかできないけど、何でも話して?」
コクンと頷くあたし。


「誰にも…」
「ん?」
「誰にも…こんなこと、言えなくて…」
ゆっくりあたしは顔を上げた。

「わっ、沙羅ちゃんヒドイ顔!!!」
そう言って笑い出した。
「っえ?!」
拓也に鏡を渡される。
「…っぷ」
自分の顔の酷さに笑えて来た。
それから2人して笑った。

「沙羅ちゃんは、笑ってるほうがいいよ」


そういわれたあのときから、あたしの心は動いてた。
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