真冬のひまわり

からすとひまわり。



「あっちー」


けだるそうにぱたぱたと手扇をする彼。
墨のような漆黒の髪をかきあげ
同じく黒い切れ長の瞳で
ぎらぎらと照りつける太陽を睨む。
焦げすぎたトーストのような小麦色の肌は
決して日に焼けた証ではない。

…でも確かに暑い。
地球温暖化のせいか、うだるような暑さ。
二酸化炭素を恨めばいいのか?
はたまたそれらを生み出した
我々自身を呪うべきか。

かの爽やかな夏はもうここにはない。
真夏の夜の夢を描いたシェークスピア、
この記録的な熱帯夜に
彼ならどんな戯曲を授けるのだろう。

「井上、五月蠅い

「だってーあちぃもんー」

無駄に高い、否、デカい鷲鼻を
めいっぱい膨らませて抗議された。

「いくら暑い暑い言ったって、
暑いもんはかわらんだろ」

しばらくしょげる彼。
まったく、彼はいつになったら
自立できるんだろうか。
180もの背に不釣り合いなほど
彼の心は子供だ。

「…あおいー」

「…何?」

「膝枕してー。」

「…やだ」

「あとーマッサージもー。耳の後ろくいくいってするやつ」


訂正。彼は、ワガママだだっ子だ。


…でもわたしは
そんな彼――井上智が


…嫌いではない。
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