子供の頃の僕は泣き虫だった。

父に叱られたり、学校でクラス・メートにちょっとからかわれたりしただけですぐに涙を流し、それを母に報告するときにもまた泣いた。

しかし母はそんな僕に決して泣くな、とは言わなかった。

泣くな、と言うかわりにいつもこう言ってくれた。

「泣きたいときには好きなだけ泣けばいい。涙は決して枯れないのだから」
 

それは救いの言葉だった。

もしも泣くなと言われていたら、僕はその言葉に随分と追いつめられていたと思う。

しかし母のおかげで僕は自分自身を否定することなく、幼少の日々を過ごすことができた。


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