僕がピアノを習っていたのは、兄と違い何の取り柄もなく時間を持て余していた僕に母が何か習い事でもしたらどうだ、と勧めたのがきっかけだった。

何かを習うことは悪くないと思ったが、勉強もスポーツもあまり好きでない僕が一体何を、と考えたとき、唯一興味があったのが音楽だった。

幸い家に母が昔弾いていたピアノが置いてあったので、僕は軽い気持ちでピアノを習うことを決めた。

早速僕は通っている学校の音楽教師であるスーザンに、誰かピアノを教えてくれる人がいないか相談した。

すると3日後にエミリーを紹介してくれた。

エミリーはスーザンが卒業した大学に通っている僕より4つ年上の20歳の女性だった。

指定された日、僕はスーザンに貰ったエミリーの住所の書かれたメモを手に彼女のアパートを訪れた。

入り口の前に立つと、僕はもう一度メモの住所を確認してからドアをノックした。


少しの間を置いて、中からエミリーが現れた。

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