無気力LoveStory

あたしはキスをしらない。

だけどもっと甘い雰囲気ってあるものだと思ってた。


こんな緊迫した空気の中で、
晴天でも雨でもない曇り空の下で、

つきあってもない人とするキスなんて、考えられない。


「や、だ…っ」

怖い

先輩が先輩じゃないようで。

先輩は何にでも淡白で、いきなりキスなんてしてくる程性欲があるようにも見えない人で。


「やめて…!」

怖くて涙が出る。

瞳にたまった涙が頬を伝ったとき、先輩は初めてピクリと反応した。


ピタッと一度止まって
サッと唇を離す。

「え、え、灰音ちゃ…、泣いて…」

焦ったような声が、行き場のない手をうろうろさせながら言う。



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