ボーダー
若あゆ、ホントに楽しかったなぁ。

2日目の朝、朝食を食べに降りたとき、寝起きで少し立っているミツの髪にドキドキした。

私も、少し寝癖が直っていない。

その髪に触れられて、ミツの指の感触に、色気を感じて、しばらくその場から動けなかった。

その様子を見て、ナナに肘で小突かれた。

自分も、矢榛くんのこと、好きなクセに。

昨日、寝る前にナナから聞いた話だ。

「私、部活帰りに、雨に降られたの。
結構な大雨で、折りたたみじゃ防げないくらいの。
昇降口で途方に暮れてたら、信ちゃんが傘を貸してくれたの。
もう一本持ってるから、って。

でも、信ちゃん、本当は持ってなくて。
翌日、風邪で休んだのよ。

『オレは、バカだから風邪引かないの!
ナナちゃんは、頭いいから風邪引いちゃう。
それに、女の子に風邪引かせちゃいけないでしょ!』

そう言ってくれて。
それで、信ちゃんに一目惚れ。

っていうか、小さい頃から家が近所でよく遊んでた時から意識はしてたんだと思う。
これで、本気で好きだって意識したかな。」

なるほど。
これは、応援しなきゃね!

私たちが朝食を終えた頃に、食堂に来た女子4人。先生に雷を落とされていた。

ナナがその子たちの顔をチラ見して、顔を青くしていた。

「ナナ、どうしたの?」

「……帳 奈斗《とばり ないと》くん。
彼の、一番の駒だったのが、あの4人の中にいるの。
一木 有海《いちき あみ》。
奈斗くんに惚れてた、っていうのは噂話だったけど、多分、本当に本気で惚れてる。
奈斗が喜んでくれるなら何でもやる、って言ってたもの。
ハナ、気をつけて。」

エージェントルームで、調べてもらうか。
あの場所を使えば、調べられていることは本人には勘付かれない。

若あゆのバスから降りた後、エージェントルームに直行した。

着くなり出迎えてくれた伊達さん。
彼は完全防音になっている個室に私を招いた。

「ハナ、知りたいのは一木 有海の情報か。
自分で傷を抉る気?」

「知りたいんです。
何が、そんなに彼女を変えたのか。
元来、悪い子じゃないのは、オーラが証明してる。
第一、本当に悪い子なら、魔力が身体に馴染まないもの。
改心したら、友達になって、ちょっとでも助けになりたい。
そう思ってます。」

「そういう真っ直ぐなところ。
レンも、そしてミツも。
恋愛禁止、っていう規則を破りたくなる理由が分かる気がするな。」

伊達さんは、一木 有海に関する資料を渡してくれた。
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