ボーダー
次は、ハナだな。

手際よく、携帯の番号を押し、掛けてみる。
第一声から、テンパっていた。
可愛いよな、相変わらず。

『どう?そっちは。
居心地いいの?』

「まぁな。
様子を見に、FBIの人だったり、近所の子も来てくれる。
身体を鍛えたい場合はジムとかも使えるし、充実してるよ。」

いいなぁ、と羨ましがるハナ。

数時間前に無理矢理性暴力を受けた被害者だとは思えなかった。

「何かあったら、遠慮なく話せよ。
レスポンスは遅くなるけど、ちゃんと返すからさ。」

『うん、ありがとう!
そう言ってくれて助かるよ!』

「いじめとかあったら言えよ。
さっき、少し話題に挙げた近所の子が13歳で検事になってる。
そこは自由の国アメリカ、何でもありだ。

その子に話持っていくこともできるからな。」

『今の所、そういうのはないけど。
もし、何かあったら、相談させてもらうね!

で、何?
その近所の子のこと、好きなの?』

好きだよな、女って。
こういう話……。

「今は、そういう感情はないかな。
将来的には、分かんないけど。」

『そっちも、何かあったら言ってね!
アドバイスできるかも!』

わかった、と相槌を打つ。

ほんとに、性暴力被害を受けたのだろうか。

それくらい、普段のハナと変わらない。

まぁ、ミツがそれだけ、ちゃんと傷を癒やしたということなのだろう。

それが、挿入したフリであったことを、オレは日本に帰国してから知ることになる。

そして、それはないと言ったが、ミツを平手で殴ることになるなんて、この当時は知らない。

『身体が資本だから、無理せずがんばろうね!
勉強に部活。
レンは勉強に修行。
お互いにいろいろ大変だろうけどさ。』

「そうだな。
ほどほどに頑張ろうな。」

電話は切られた。

幼なじみとこうして話すのも、いい気晴らしになる。

いつかは、天秤にかけることになるのかな。
さっき電話で話した幼なじみと、今は、ゆっくりお風呂で身体を暖めている子。

ちゃんと、その時に、どちらかを選べるだろうか。

そう思っていると、コンコンと外からノックの音がした。

Tシャツにショートパンツの女の子。
メイだ。

少し出てきている胸に嫌でも目がいく。

「あ。お風呂、あいたわよ。」

「お、ありがと。
オレ、ちょっと入るわ。」

たまにこの子が来て、FBIの大人たちも様子を見に来てくれて。
日本には、気を許せる幼なじみもいる。

何とか、この国でやっていけそうだ。

日本で高校生に上がる頃まで、元気でいないとな。
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