ボーダー
卒業式、で思い出す。
合唱部での卒業を祝うパーティーがあったんだった!
ミツも連れて、音楽室に突撃する。
ミツは部員じゃない、というツッコミが普通なら来るだろう。
お祝いの場だ、特に何も言われなかった。

黒板も可愛く装飾してくれて、後輩が卒業を祝ってくれて、皆に祝福される、アットホームな空間が居心地いい。

寄せ書きも貰った。

『蒲田先輩
今までお世話になりました。
同じパートでたくさん練習できて、一番先輩と一緒にいる時間が長かった気がします!

御劔先輩と末永くお幸せに!

式には呼んでくださいね!』

……これは何だ。

卒アルにも、友佳や麻紀から似たようなことを書かれていた。
嬉しくないわけではないが、少し複雑だ。

ツン、とミツから背中を叩かれた。

「14時じゃねぇの?
そろそろ行かないとマズいんじゃね?」

そうだ。
そろそろここを出なければ、間に合わない。

「皆、今日はありがとう!
素敵な寄せ書きも、嬉しかったよ!

じゃあ、皆も元気でね!

文化祭とかOBOG会とかあったら、極力参加するから!」

あまり言葉を言うと、泣いてしまいそうになるから、あまり言わずに、音楽室を去った。

外から、軽自動車が見えた。

ずっと停まってるあの車は、まさか……。

「優くんに華恵ちゃん、ちょっと遅いよ?
一回家に帰って、卒業証書やら卒アルの大きい荷物置かないとなんでしょ?」

「そうでした……。」

真くんにチクリと言われて、頭を下げる。

「まぁまぁ。
真も、そんな責めることないじゃん。

その間に、友佳と一成くんが婚姻届出せて、新しい姓で寄せ書き書いてもらえたみたいだからいいけどね。」

おかげさまで、無事同じ苗字になれました、と友佳と一成くんが顔を出した。

この2人、卒業式の卒業生退場後、卒業証書を手にした後に、レンとメイちゃんのもみくちゃに紛れて学校を抜け出し、婚姻届を書いて受理してもらったというのだ。

しかも、学校と役所との送迎は、友佳の父親が役を引き受けたという。

由紀の母親と、レンがお世話になった遠藤さんのおかげなのか。
2人とも、ちょっと性格に難がある人を更生させるんだもん、すごすぎる。

部活の面々にはあらかじめ寄せ書きを書いてもらう必要があるため、卒業式当日に姓が旧姓の『矢浪』から新姓の『黒沢』になることを教えていた。

しかし、担任をはじめ、クラスの皆は驚いており、武田さんの助けを借りて婚姻届を受理して貰った後、急いで学校に戻ってきて新たな姓で寄せ書きを貰ったのだ。

すごいよなぁ、2人とも。

そんなことをぼんやり思っているうちに、ミツの家の前に着いていた。

ミツが気をきかせて、帰りはオレの家の方を先に通るから、と荷物を置かせてくれた。

無事、武田さんの運転もあって、14時に間に合った。

やほー、と手を振るのは愛実と和貴くんだ。

「ごめん、急遽参加しちゃった!
旅行は行けないから、その代わり皆のブライズメイドとアッシャーのサポートに回るね!」

「オレは割と大丈夫なんだけど、愛実がバイトしてる雑貨屋、休むなら代わりを見つけないといけないみたいで。

何とか代わりを見つけられたみたい。
メイちゃんと蓮太郎の挙式は、知り合いの慶事だ、って言って休みをもぎ取ったらしい。」

愛実、大変だな……。

天気もいいため、宝月の屋敷の外にある庭で、軽食やらお菓子を囲んで、アフタヌーンティータイムとなった。

「それにしても、次のこのメンツだと僕たちが早そうかな?

いや、でもなぁ。
僕たちもこう見えて、ちゃんと料理教室継げるくらいになったら、って考えてるから、優くんと華恵ちゃんの2人と、どっこいどっこいになるかもね?
結婚して、最初の子供産む時期。」

真面目な顔して、ミツと私に、なにか言っている真くん。

「そうかもね……」

そんなことは張り合うことじゃないと思うんだけどなぁ……。

「ってか、寄せ書きにも書いたけど、式呼べよな、優!」

「うんうん、ハナもね!
何が何でも有給もぎ取って、出席するから!
あ、ここにいる皆もだよー!」

友佳ったら、テンション高いなぁ。
でも、結婚って響きはいいなぁ。

楽しい事ばかりじゃ、ないんだろうけど。

「皆様、ご歓談したい気持ちもまだおありでしょうが、もうすぐアフタヌーンではなく、イブニングになってしまいます。
続きは室内でいかがでしょう?」

「そうね。
旅行、もう明後日だもんね!
服もそろそろ準備したいし!」

そうだ、旅行用の服の準備しないと。
……忘れてた。

「ねぇハナ。
麻紀と洋服選び付き合って?」

「いいよー。
私も選びたいもん!」

きゃっきゃとはしゃぐ私たちを見て、仕方ないな、というような目で見るのはミツたち男性陣だ。

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