ボーダー
菜々美ちゃんは、ひと通り皆にメイクを教えていた。
少し疲れたようで、リビングのソファーに寝転がり、身体を伸ばしている。

話は自然にガールズトークになる。

「一成くんがパパになるの、想像つかないけどレンがもうしばらくで人の親になるかも、っていうのも想像つかないわ。

子供が仮に、まぁ2人目がそうなるかもしれないけど。
男の子だったら絶対、性格的にレンにそっくりになりそう!

その子が私たちと同じくらいの年齢になったら彼女を家に連れ込んでイチャラブしてるんじゃない?

女子にアイドル的にモテるんで、校内にファンクラブとか作られたり、っていうのも容易に想像つくわ。

実際に、メイちゃんがウチらの高校に来てから鳴りを潜めたけど、それまでは密かにファンクラブ作られてたのよ。
球技大会やら体育祭やらに応援団がいたわ。

異装届まで出して、チアリーダーの格好してたからよく覚えてる。」

ハナちゃんの言葉で、私は口に含んでいたコーヒーを吹き出しそうになってしまった。

よしよし、と背中を撫でてくれるのは、ソファーで休憩していた菜々美ちゃんと、私の左に座っていた由紀ちゃんだった。

「大丈夫?」

麻紀ちゃんがペットボトルのお水を差し出してくれる。

「ありがとう、いただくわ。」

「え、そうだったっけ?」

友佳ちゃんがと麻紀ちゃんがトボける中、愛実ちゃんも、そういえば体育祭や球技大会の時、男子側の応援席が、やたら騒がしかったのはそのためね。
体育祭最後のリレーなんて、彼の独壇場だったから黄色い声援、すごかったし。

蓮太郎くんがメイちゃんと2人で特別な証書貰った日も、体育館出たところで、今日でファンクラブは解散だね、みたいな話を女子数人が集まってしてたし。」

蓮太郎、すごい人気なのね。

そんな人を旦那に持ったんだ、私。

「心配しなさんな、メイちゃん。
ファンクラブの人たちも、メイちゃんには敵わない、って分かってファンクラブ解散させたのよ、多分ね。」

「そうそう。
割と将輝も、翌朝身体痛くなるくらい、夜は結構回数重ねてくるの。
その代わり、朝はナシなんだ。
蓮太郎くんの場合は、夜に回数重ねて、その上朝も、でしょ?

有り余りすぎてるね。

仮に1人目はもうすぐだと仮定して、2人目も割と間あけずにじゃないかな、って踏んでるわ、少なくとも私はね。」

さりげなく惚気けたなぁ、由紀ちゃん。

「そんな由紀ちゃんはどうなの?
結婚、とか。
いつぐらいには、とかあるの?」

「私はね、臨床心理士兼カウンセラーとして安定して、落ち着いたら、かな?
もう飛び級で大学院1年目終えてるから、あと長く見積もっても1年半。
インターンも、遠藤 周作教授のところでさせてもらってるから、彼のところにお世話になるかなぁ。
力つけたら、こっちに戻って、カウンセラーする。
その時、になるかな。
結婚とか、その先。

私としても、いつまでも将輝に首輪つけないでいるわけじゃないよ?

将輝、顔整ってるから日本に帰って俳優やったら引っ張りだこになっちゃうだろうから、その前には既婚者、っていう名の首輪つけたい、とは思うのよね。」

「私も同意ー!
奈斗も割と夜は有り余ってるから、回数できちゃうんだよね。
私がちゃんと、ピアニストとしての実力つけたら、その時に初めて考えるかな、結婚。」

由紀ちゃんと有海ちゃんはさすが、現実的だ。

「え?
は?
ちょっと!
いつの間にロストしたわけ?」

「その話、詳しく!」

由紀ちゃんと有海ちゃんが、ハナちゃんや友佳ちゃん、愛実ちゃんの餌食になっている。

愛実ちゃんは、ロストバージンはまだらしく、2人の話から何かを掴もうと熱心に聞いている。

「良かった、ちゃんとやることはやってくれてるのね。
そこだけは安心だわ。」

「でも、勉強のペース、また2段階くらい上げたんじゃない?由紀。
そこまで急ぐ、ってことは、いつかは、友佳みたいになる覚悟も、心のどこかではしてるんじゃない?

由紀も普通はしない高校の卒業の仕方してるし向こうも日本の高校には行ってないイレギュラーだし。
既存の枠組みにとらわれない2人だもの。

勉強のペース上げすぎもよくないよ?
ほどほどにね、由紀。」

「うん、ありがとう、愛実。
その辺りのペース配分、見直してみる。

将輝にも無理しすぎだ、ちょっとは休め、風邪ひいたら甘いお仕置きだ、って毎日のように言われてるし。」

親友の的確なアドバイスに皆ほっこりしたところに、爆弾が落とされた。

風邪引いてるのにする気か、有り余りすぎでしょ、というかツッコミは誰もする気になれなかったようだ。
私の旦那と有り余り具合に関してはいい勝負かもしれないな。

ああ、今頃蓮太郎と一緒に、由紀ちゃんの彼氏さんもクシャミしていることだろう。

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