ボーダー

インキャン

そして……ミツとは仲直りすることができないまま……イングリッシュキャンプ当日になってしまった。

宿泊場所となるのは、マグロが美味しい三浦にある 「ホテル・アドニス三浦」。

西麻布にあるテンプル大学っていうところから派遣されたALTの先生とゲームしたりするの。

あとウチの高校について先生の前でプレゼンしたり、「尊敬する人」について英語でスピーチしたり。

しかも先生、日本語が全く分からないから、会話は全て英語Only。

1泊2日の英語研修。

ウチの学校らしい行事だよね。

なんて悠長にしていられない!

遅刻、遅刻!
遅刻しちゃう!

集合時間9時30分なのに!
しかも現地集合って……!
絶対たどり着けない!

慌てて7時に家を出る。

ダッシュで駅まで走った。
……走っても、間に合うかはわからないけど。

だけど……私だけ遅刻して大恥かくのはカンベンだよ。
泣きそうになりながら、駅まで走っていた。
すると……

急に私の前方を走っていた赤い車が私の前で停まった。

「……嘘…!
ミツ?」

その後部座席のドアを開けていたのは、他でもなくミツで。

「……早く乗れ。
……遅刻すんぞ?」

ミツに腕を引っ張られて……車に乗せられる。

……助手席にはレンがいた。
運転席にいるのは智司さん。

仕事でめったに帰ってこないはずのミツのお兄さんが、何でここに?

「す、すみません。
私まで乗せてもらっちゃって。」

「横浜地裁に用があるから、ついでだ。
だから横浜駅までしか送っていけないけど。」

「……そんな!
とんでもないです!
ありがとうございます!」

……なんか……気まずいなあ。

「……ずっと……避けててごめんな。
ハナ。全部、レンから聞いた。
好きな奴、レンじゃないんだろ?

悪かった。
ツラい思いさせたよな。」

「謝るのは私もだよ。
私こそ、ハッキリ和貴くんの前で好きな人言わなかったから。
私なら全然、大丈夫だよ?」

そう言ってみるけど、絶対ミツにはバレてるんだろうな。
インキャンの3日前に熱出したことも……
ミツのことで昨日泣いてたからあまり寝てないことも。

もちろん、今かなり眠いってこともね?

いつの間にか眠ってしまった私。
レンに起こされた。

ミツのお兄さんにお礼を言って車を降りる。
ミツとレンのガイドで電車を乗り換えて、無事に最寄り駅に到着。

そこから少し歩くと、ホテルの本館が見えた。

担任の先生にクラスと名前を言って、名札をもらってから、各々自分の部屋へ行くように指示される。

部屋に行く前、レンに言った。

「ねぇ、レン!
『起きないと寝言でミツの名前言ってたこと、本人にバラすからね。』
って起こし方はなくない?」

「ハナが起きないから悪い。」

部屋には、すでに愛実と友佳と麻紀がいた。

4人でとりあえず荷物を置いて、くつろぐ。

「ハナ、仲直りしたみたいね?
ミツくんと。」

「うん!
愛実にも心配かけたね、ごめん!」

「良かったね、ハナ。」

「……愛実はー?
好きな人いないの?」

「恋バナなら友佳も混ぜて!
ハナ、いろいろ聞かせて!」

「ハナ先生の恋バナ、聞きたい!」

私は先生ではないんだけれど。
ガールズトークに花が咲いた矢先、部屋のドアがリズムよくノックされた。

「はい!」

麻紀が走ってドアに向かう。
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