ボーダー
事情

秘密

〈ハナside〉

インキャンから約2ヶ月。
私とミツは相変わらずラブラブだ。
もうすぐクリスマスだ。当日は2人で過ごす。それは確定事項だ。
イブは高校のメンツでパーティーしたいと考えている。23日は……何しようかな?

……妙案を思いついてしまった。

エージェントルームの皆でパーティーでもやったら、かなり楽しそう!

そうと決まれば、さっそくミツと2人で相談を持ちかけに行った。

もしかしたら伊達さんから、レンのことについて何か聞けるかもしれないしね?

……あのインキャンの日から、様子おかしいんだもん。

幼なじみなんだから、それくらい分かるよ?

放課後、部活は愛美にサボる旨を伝えて、ミツとエージェントルームへ行った。

……すると、先客が。

噂をすれば……レンだった。

「ハナ、ミツ!
……なんか偶然だな。」

いやいや、何でレンがここにいるのさ。

今日……茶華道部あるはずでしょ?
レンも部活サボり?

「ん?
ちょっと、伊達さんに相談事があって来たんだ。
でも伊達さん、半年前辺りからずっと来てないっぽいんだよね。」

レンから聞いた、思わぬ言葉。

え!?

あの、伊達さんが……来てない?

彼は風邪以外では欠勤したことないって、有名なのに……

「その話も気になるけど、レンのことも気になるな。
……いいかげん、話してくれるよな?
あのインキャンの日、一体どこに行ってたんだ?」

ミツも気になってたんだ。
え、でもそれは、何もこの場で言うことなくない?

「……わかった。
伊達さんに話せば、どうせバレてたんだ。
全部話すよ。」


レンから聞いたのは、アメリカでレンに優しくしてくれた女の子の話。

初めて聞いたな。

さては、その子に惚れてるね?

幼なじみとして、レンの恋の応援、しなきゃでしょ。

その子がいるって聞いて、慌てて空港まで追いかけていったのね。

「なんか……メイ、元気なかったんだよね。
脚にアザ出来てたし。

オレ、メイを追って、あの後すぐにでもアメリカに行ったほうが良かったのかな。
だけど……メイにとって余計なおせっかいだったらイヤだし……」

そんなに……悩んでたんだ。
恋煩い、ってやつ?

「今は……行かないほうがいいと思う。
脚のアザの原因は私も気になるけど。
その優しさが……その、レンが好きな、メイちゃんって子にとっては重荷になる気がする。

プレッシャーになると、心の傷の回復には逆効果なんだって。
中学の頃、由紀が言ってた。」

「それは分かってる。
でも、最悪の事態になったらどうしよう。
って考えるんだ。
気持ちを伝えられないまま、アイツに何かあったら、って考えると、居ても立っても居られない。」

「……守りたい、って思うか?
その子のこと。
話に挙げて悪いが、ハナが昔されたようなことをされたとしても、側に居て守ってやりたい、って思うか?」

ミツがレンに、そう問いかける。
レンは即答で返した。

「守りたい。
側に居たいよ。」

「……自覚するのが遅いな。
ハナのときもそうだったが、本命のときはもっと遅いな。

いや、違うな。
本当は気付いていたのに、気付かないフリをしていただけか。

その気持ちこそが、恋愛感情としての好き、ってことだよ、レン。」

同性の言うことは含蓄があるなぁ。


「それにしても、厄介だぞ。
ハナみたいな素直じゃないヤツと付き合うと。」

「もう!何よそれ!」

……よく、麻紀や友佳に"私とミツの会話が常にコントみたい"
って言われるのも、こんなことばっかり言ってるからなのかな?

「……ありがと。
心配してくれて。
もうしばらく待って、SOSが入ったら行くよ。
高1のうちは勉強が心配だし。
留年したらたまらん。」

……それにしても、エージェントルームがこうも静かだと落ち着かない。

いつも伊達さんが面白い話題を提供してくれるからいつもにぎやかだったのに。
ホントに…どうしちゃったんだろ。

「そぉいえば、明日香さんも最近パッタリ来なくなったらしい。」

明日香さん……まで?

明日香さんがいると聞くと、ナナと矢榛くんも来る。
なんだか、明日香さんの仕事ぶりに惚れ込んでアパレル関係の仕事に就きたいようだ。

風の噂で聞いたが、若者が集まる街でデートしていたとき、ナナが芸能事務所でモデルをやらないかとスカウトされたとかされたようだ。

その類の話は簡単に信用しちゃいけないから、本人としては返事を保留しているらしい。

……あ。

伊達さん確か、亡くなった母親に影響受けて日記書いているって前に言っていた。
それを読めば、来ない理由がわかるかもしれない。

伊達さんの机の引き出しに立て掛けてあったノートを開く。
興味本位で開いたことを後悔するくらい、衝撃的な内容だった。

伊達さんと明日香さんだけじゃない、室長にも関係することだったから。
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