素敵すぎる上司
私の頭の上で、香取さんが動く気配がする。後部座席でゴソゴソと音がする。


襲われたんじゃないみたい。


「佳奈子さん、これを膝の上に置いてくれる?」


香取さんは、買い物が入った紙の手提げ袋を持っていた。


「え?」


「これをさ、こうやって持ってて?」


そう言って、その手提げ袋を私の脚の上に乗せた。


「運転に集中出来ないからさ……」


そういう事か……。香取さんって、意外にエッチなんだなあ。


「さてと、帰ろうか?」


「はい」


それにしてもびっくりしたなあ。変な汗かいちゃった。


「暑いから、少し窓を開けるよ」


「はい」


半分ほど開けられた助手席の窓から、5月の爽やかな風が入って気持ち良かった。

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